要点
Tendermintは、コンセンサスとネットワーキングを担うオープンソースのブロックチェーンエンジンです。開発者はどのプログラミング言語でもアプリケーション層を構築できます。
ビザンチン・フォールト・トレランス(BFT)に対応したプルーフ・オブ・ステークをコンセンサスモデルとして採用し、トランザクションの即時ファイナリティを実現しています。ブロック承認を待つ必要はありません。
アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(ABCI)がコンセンサスエンジンとアプリケーション層を分離することで、モジュラー型の柔軟なアーキテクチャを実現しています。
Cosmos SDKはTendermint(現在はCometBFTとして管理)を基盤として構築され、数百のチェーン間でクロスチェーン相互運用性を可能にするブロックチェーン間通信(IBC:Inter-Blockchain Communication)プロトコルを支えています。
2025年4月、IBC v2(Eureka)がCosmos Hubでローンチされ、サードパーティブリッジを使わずにイーサリアムへのネイティブな相互運用性が実現しました。
はじめに
普段使っているブロックチェーンの構造は、かなりの制約があります。開発者の選択肢は大きく分けて二つあります。制約の多い環境でアプリケーションを構築するか、コードをフォークして新しいチェーンを構築するかです。ただし、新しいチェーンを構築するのは簡単ではありません。ネットワークを立ち上げ、コンセンサスメカニズムを選定する必要があります。
Tendermintは、このプロセスを簡略化するオープンソースソフトウェアです。コンセンサス層とネットワーク層をあらかじめ用意することで、開発者は好きなプログラミング言語を使い、アプリケーション層の構築に専念できます。
Tendermintについて理解すべきポイント
ブロックチェーンのアーキテクチャを理解する
Tendermintはビットコインやイーサリアムのようなブロックチェーンスタックの一種です。ブロックチェーンスタックはデータベース単体ではなく、ノードのピア・ツー・ピアネットワーク、ノード間の通信方式、その上で動作するトランザクションやスマートコントラクトのロジック全体を指します。ブロックチェーンへの参加者が互いを信頼せずに、ネットワークの状態を共有し、合意することを目標としています。
現在の主要なブロックチェーンの多くは、ソフトウェアコンポーネントが密接に連携したモノリシックアーキテクチャを採用しています。一部を変更すると他の部分が動作しなくなるリスクがあります。Tendermintでは、モジュラーアーキテクチャを採用し、各コンポーネントを独立して更新できるように設計されています。
ビザンチン・フォールト・トレランス(BFT)
ビットコインは、ビザンチン将軍問題として知られる、分散システムにおける長年の課題を解決しました。詳細はビザンチン・フォールト・トレランスに関する記事をご覧ください。ここで簡単に説明すると、BFTとは、一部のノードが虚偽または改ざんされたメッセージを送信した場合でも、参加者全体が合意に達できるシステムの特徴を指します。
ビザンチン・フォールト・トレランスに対応していないブロックチェーンは、中央の調整機能なしに安定した動作はできません。ビットコインはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)コンセンサスアルゴリズムでこの問題に対処しました。Tendermintは異なる手法で対処しています。
ブロックチェーンの3つのレイヤー
ブロックチェーンは一般的に、アプリケーション層、コンセンサス層、ネットワーク層の3つのレイヤーで構成されています。コンセンサス層とネットワーク層では、ノード間で通信し、共有された状態に合意します。アプリケーション層では、ユーザーや開発者が分散型アプリケーション(dApp)やスマートコントラクトのロジックを通じてブロックチェーンと直接やり取りします。
Tendermintはコンセンサス層とネットワーク層を直接処理します。アプリケーション層は完全に開発者に委ねられています。
Tendermint Core
用語について補足しておきます。Tendermintは、Jae Kwon(ジェイ・クォン)氏が設立した企業名と、そのソフトウェア名の両方を指します。コンセンサスエンジンの名称はTendermint Coreです。2023年、Cosmosエコシステムを超えて広く普及したことを反映し、Tendermint CoreはCometBFTに改称されました。プロトコルを指す場合、この2つの名称は事実上同じ意味で使われています。
CometBFT(旧Tendermint Core)は、ビザンチン・フォールト・トレランスに対応した分散型コンセンサスエンジンです。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)メカニズムを採用し、ラウンドごとにアクティブセットからランダムに選ばれたバリデーターが次のブロックを提案します。他のバリデーターから十分な承認を得れば、ブロックが追加され、ファイナリティは即時に確定します。ビットコインやイーサリアムとは異なり、承認を待つ必要はありません。
バリデーターの3分の2以上が誠実であれば、ネットワークは正常に動作し続けます。CometBFTは1秒あたり1,000〜10,000件のトランザクションを処理でき、ファイナリティ(最終確定)は6秒未満で達成されます。
アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(ABCI)
Tendermintが開発者から支持される大きな理由の一つに、アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(ABCI)があります。これはコンセンサスエンジンと、開発者が構築したアプリケーション層をつなぐインターフェースです。ABCIは標準規格として定義されているため、開発者は好きなプログラミング言語でアプリケーションを記述し、コンセンサスエンジン自体を変更することなく接続できます。
つまり、新しいブロックチェーンを構築する開発者は、コンセンサスをゼロから実装し、バリデーターネットワークを立ち上げる必要がありません。アプリケーションのロジックを定義して、スタックに組み込むだけで済みます。
Ethermintのその後
Tendermintの可能性をいち早く示した例の一つが、イーサリアム仮想マシン(EVM)をTendermint Coreに接続するプロジェクト、Ethermintです。これにより、プルーフ・オブ・ステークチェーン上でSolidityスマートコントラクトを動かすことが可能になりました。このプロジェクトはその後、EvmosおよびCosmos Labsが2025年にオープンソース化したCosmos EVMへと発展しました。イーサリアム互換の実行環境と、より高速でエネルギー効率の高いコンセンサス層を組み合わせるというコンセプトは、現在もCosmosエコシステムの中心的な考え方として根付いています。
ブロックチェーンの相互運用性とCosmos SDK
Cosmos SDKは、CometBFTを基盤として構築されたオープンソースのフレームワークです。開発者はこれを使って、アプリケーション特化型のパブリックまたはプライベートブロックチェーンを構築できます。これらのチェーンはIBC(ブロックチェーン間通信)プロトコルを介して広範なCosmosネットワークと接続でき、中央集権的なブリッジを必要とせずにチェーン間での資産移転やメッセージ送信が可能になります。これが多くの人から「ブロックチェーンのインターネット」と呼ばれる理由です。Cosmos SDKが提供する相互運用性は、多くの開発者の関心を集めています。
2025年4月、IBC Eurekaとも呼ばれるIBC v2がCosmos Hubでローンチされました。このアップグレードにより、IBCのネイティブな接続性がイーサリアムにまで拡張され、サードパーティブリッジを使わずにCosmosチェーンとイーサリアム間で資産を移転できるようになりました。現在、115以上のブロックチェーン間で、月間30億ドル以上のクロスチェーン取引量を支えています。エコシステム全体については、Cosmos(ATOM)とはをご覧ください。
Cosmos SDKを使って構築された代表的なプロジェクトには、BNB Smart Chain、Osmosis、dYdX、Injectiveなどがあります。分散型取引所からデリバティブプラットフォーム、アプリケーション特化型の金融チェーンまで、このフレームワークが対応できるユースケースの幅広さを示しています。
よくある質問
TendermintとCometBFTの違い
どちらも同じコンセンサスエンジンを指します。2023年、元のCosmosプロジェクトの枠を超えた独自の開発と普及を反映するため、Tendermint CoreはCometBFTへと名称が変わりました。基盤となるプロトコルおよびBFTプルーフ・オブ・ステークの仕組みに変更はありません。
TendermintとCosmosの違い
異なります。Tendermint(CometBFT)はCosmos SDKを支えるコンセンサスエンジンですが、両者は別個のコンポーネントです。Cosmosは相互運用可能なブロックチェーンの広範なエコシステムであり、TendermintはそのCosmosチェーンが利用できるコンセンサス層とネットワーク層を提供するものです。
Tendermintが即時ファイナリティを実現する仕組み
Tendermintはラウンド方式のバリデーター投票プロセスを採用しています。バリデーターの3分の2以上がブロックへの署名・承認を完了した時点で、そのブロックは確定(ファイナル)します。確率的ファイナリティ(承認回数が増えるにつれて確定される仕組み)は存在せず、チェーンが再編成されるリスクもないため、トランザクションは1ブロックで承認されます。
ABCIとは
アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(ABCI)は、Tendermintのコンセンサスエンジンとアプリケーション層をつなぐ標準インターフェースです。開発言語に依存しない設計になっているため、どのプログラミング言語でもアプリケーションを記述でき、Tendermintのコンセンサス・ネットワークスタックの恩恵を受けられます。
IBC v2(Eureka)とは
2025年4月にローンチされたIBC v2は、IBCプロトコルのアップグレード版です。CosmosチェーンとイーサリアムのネイティブなIBC接続を実現し、サードパーティブリッジを不要にします。2つのエコシステム間での資産移転やメッセージ送信を直接行えます。
まとめ
新しいチェーンを構築するたびに、コンセンサスをゼロから実装しなければならない。これは多くの開発者が直面してきた共通の課題です。Tendermintはその課題に正面から応えました。ABCIを通じてコンセンサス層とネットワーク層をアプリケーション層から切り離すことで、開発言語に依存しないモジュラー型の基盤を提供します。CometBFTがそのアーキテクチャを受け継ぎ、Cosmos SDKがそれを実用的なツールキットとして結実させた結果、今では業界で最も活発なチェーンの一部を支えるまでになっています。 (★校正者へ:原文は "Tendermint solves a common problem in blockchain development: how to build a new chain without reinventing consensus from scratch." の1文。コロンで「問題=解決策」を同一視する構造で、日本語にすると論理が曖昧になるため、「課題の提示」と「Tendermintの応答」を3文に展開しています。直訳に戻すと読者に伝わりにくくなるため、現訳を維持してください。)
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